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時代の岐路に立つ都市国家(シンガポール)

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▼人民行動党(PAP)がリードしてきたシンガポール

 2011年、シンガポールは独立後46年目を迎える。天然資源がなく、貿易路の寄港先として栄えた同国は、初代首相リー・クアン・ユー、第2代のゴー・チョク・トン、そして第3代で現首相のリー・シェンロンの強力なリーダーシップのもと、日系を含む外資系企業を積極的に誘致し、彼らにとって円滑な経済活動環境を構築すべく物流、金融システムを集約、ハブとしての地位を築いた。
 また、海外からの来訪者を増加させるため、観光産業にも注力し、昨年には2つのカジノを含む総合リゾート「マリーナ・ベイ・サンズ」がオープンした。これまで、アジア通貨危機やリーマンショックといった困難な状況から速やかに回復し、昨年はGDP前年比14.5%という驚異的な成長を達成した。 

 国家としての方向性の決定や困難な状況に対する迅速な対応は、人口500万人という小さな都市国家であるということ、天然資源がなく、水でさえ輸入に頼らざると得ない状況で、国民と政府の問題意識の共有、共感が容易であることなどが理由として挙げられる。

 これらに加え、独立当初から人民行動党(PAP)という圧倒的与党が、一貫して政権の舵取りをしてきたことも大きく寄与している。

 PAPは、1954年、弁護士であったリー・クアン・ユー氏が中心となり結成された。1965年、マレーシアから独立したシンガポールは、このPAPによる事実上の一党支配体制を確立するという道を選んだ。その後、今に至るまでその体制は継続し、これまでのシンガポールの著しい経済成長を牽引してきた。

 

▼新しい時代の気配

しかし、今年5月に実施された総選挙において、これまでとは違った風が吹いた。結果だけを見ると、全87議席中、与党PAP81議席を獲得し圧勝となり、リー・シェンロン首相は続投、政策の内容としてもこれまでと大きく変わることはないと見られている。ただ、今回の選挙で、国民のPAPへの圧倒的な支持でその一党体制を支援するという構図は、PAPの得票率の低下という形で少し崩れ始めた。

 シンガポールの選挙制度は、単独選挙区という日本の小選挙区と同じく、1つの選挙区内で1つの議席を争うものと、集団選挙区という定数が4から6の選挙区で、得票数の多い政党がすべての議席を獲得する2種類のシステムが組み合わさっている。

特に集団選挙区においては、立候補する政党は定数分の立候補者を擁立する必要があることから、与党に有利な制度であると言える。下表のとおり、議席の獲得割合としては、その圧倒的なプレゼンスは変わらないが、2011年の得票率を見ると最低の得票率を記録した1991年をわずかではあるが下回った。 

また、特徴的な事象として、PAPにとって有利であるはずの、集団選挙区の1つで野党が勝利した。これまで単独選挙区で出馬し、圧勝していた野党・労働者党の代表が集団選挙区に国替えし、PAPもジョージ・ヨーという現職の外務大臣を筆頭に迎え撃ったが、労働者党が55%近い得票率を得て、圧倒的な勝利をおさめた。

 その他にも、身近なシンガポール人が公然と野党に投票すると口にしたり、FacebookTwitterなどで与党の政策批判がされるなど、シンガポール流の民主主義が進化し、新しい時代が築かれつつある気配が感じられる。

 

PAPの議席獲得数・割合と得票率>

 

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シンガポール日本商工会議所 事務局長 東 潤一