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炭素税導入の動向に注目(オーストラリア)

▼炭素税を発表

 オーストラリアのギラード首相は7月10日、包括的な地球温暖化対策として、排出ガスに応じて企業に課税する炭素税制度の詳細を発表した。来年7月1日から導入し、3年後の2015年7月には、排出価格が市場の需給で決まる排出権取引制度(ETS)に移行する。

 初年度の1トンあたりの炭素価格は23豪ドル(約2,000円)で、その後、負担額は毎年2.5%ずつ引き上げられる。課税の対象となる企業は、二酸化炭素(CO₂)排出量の多い約500社だが、具体的な企業名はまだ発表されていない。新制度を通じて企業に温暖化ガスの排出削減を促し、2020年までに1億6,000万トンのCO₂排出量削減を目指す。

炭素税の導入により、企業が電気代や食品価格を引き上げる見通しがあることから、オーストラリア政府は、家計の平均負担額を週9.90豪ドルと見込み、全体の9割に相当する世帯を対象に、補助金や減税を実施する。鉄鋼や石炭火力発電所など大きな影響を受ける産業の支援策として、3年で92億豪ドルを充てる予定だ。

 

▼厳しい舵取りが求められるギラード政権

 昨年8月の選挙で辛うじて政権の維持に成功したギラード政権だが、その前途は極めて多難である。二大政党の両党が共に下院の過半数を制することに失敗したハング・パーラメントの状態で、政権の行方は二大政党に属していない少数政党の緑の党1議員と無所属4議員の意向次第となっている。また、上院でも二大政党のいずれもが過半数を制しておらず、緑の党が単独で「バランス・オブ・パワー」を掌握する形となる。

 ギラード首相は、昨年8月の選挙戦で、任期中は炭素税を導入しないと公言していたが、一転して今年2月に計画を発表した。ギラード政権が極めて脆弱な労働党の地盤を強化するには、下院で政権を支え、上院で政策決定に大きな影響力を有する緑の党を懐柔する必要があり、こうした背景が炭素税の発表に繋がったとの見方もある。なお、炭素税の導入には、ギラード政権の公約違反と受け止める国民も多く、各種の世論調査では支持率が低迷しており、年内に予定されている関連法案提出後の議会審議では、曲折も予想される。

 

▼インフラ分野における日豪の相互補完関係

 4月23日に東日本大震災の被災地を訪問したギラード首相は、日本への液化天然ガス(LNG)等の安定供給を表明した。オーストラリアは日本にとって重要な資源供給国であることを改めて認識させる結果となったが、近年では、インフラなど新たな分野での日豪二国間協力も進んでいる。

 オーストラリアでは今後10年間にわたり、7,500億豪ドルもの資本がインフラ事業投資に必要と言われている。そのインフラ整備モデルとして浸透しているのが官民連携(PPP)スキームである。官民が連携して民間の資金やノウハウを生かし、インフラ事業のリスクをシェアするPPPスキームは、オーストラリア全土で実施されている。近年、水やエネルギー関連のインフラ等への投資が相次ぎ、高度な技術・ノウハウや資金力を有する日本企業への期待も大きい。

 日本商工会議所に事務局を置く、日豪経済委員会では、インフラビジネスでの二国間協力の可能性を探るため、両国のみならず、インドやインドネシアなど第三国でのプロジェクトも視野に入れ、活発な活動を展開している。

 

シドニー日本商工会議所 前事務局長 佐々木 和人