商工会議所2級簿記検定試験問題漏洩指摘に関する調査報告概要

 日本商工会議所は、第98回簿記検定試験(平成13年6月10日施行)の問題の一部漏洩疑惑を指摘した投書が到着した6月11日(月)午後から、東京商工会議所と共同で調査に着手した。調査は、稲葉会頭の命により、篠原徹常務理事を総括責任者とし、日本商工会議所事業部管理職・担当職員、東京商工会議所会員サービス局管理職・担当職員により構成された調査チ―ムを発足させ、漏洩の可能性が考えられるすべての段階を対象に、日本商工会議所として最大限の努力を払い調査を行った。

 調査当初から、顧問弁護士と協議しながら調査を進め、投書で指摘された講師および教育機関関係者との面談の際には顧問弁護士も同席し、種々説明を聴取した。また、施行商工会議所(503)すべてに対して試験問題の管理体制に関する実態調査を行った。

1.  調査対象は、次のとおりである。
(1) 問題作成者
(2) 印刷会社
(3) 運送会社
(4) 日本商工会議所内部
(5) 施行商工会議所(503)
(6) 投書者本人
(7) 投書に指摘された講師
(8)当該講師の受講者(5名)
(9)当該講師が所属する教育機関
2.  調査対象(1)の結果については、次のとおりである。
  • 6月13日(水)に総括責任者である篠原常務理事が在京の問題作成者9名の委員に直接ヒアリングを行ったが、漏洩の疑いがあるとの心証は得られなかった。残り3名の地方在住の委員については、事業部管理職が電話でヒアリングを行ったが、同様の心証であった。
  • 12名の全委員から守秘義務を怠ったことはない旨の文書が提出された。
  • 以上から、問題作成者からの漏洩の疑いは認められなかった。
3.  調査対象(2)および(3)の結果については、次のとおりである。
  • 6月12日(火)事業部管理職・職員の2名が印刷会社に立ち入り調査を行い、作業体制・管理体制を調査したが、異常な点はみつからなかった。
  • 配送については、印刷会社から出された梱包数と運送会社が配達した商工会議所の受領印のある伝票が一致したことを職員が確認した。運送会社からは、配送上、異常はなかったとの報告があった。
  • 以上から、印刷会社、運送会社からの漏洩の疑いは認められなかった。
4.  調査対象(4)の結果については、次のとおりである。
  • 6月15日(金)に、総括責任者である篠原常務理事が、試験問題を扱う管理職1名・職員1名および各部の管理責任者に対して直接ヒアリングを行い、各人から就業規則に基づく守秘義務を遵守している旨表明があり、漏洩の疑いがあるとの心証は得られなかった。
  • 6月18日(月)に、総括責任者の指示に基づき日商各部の管理責任者が全職員にヒアリングを行い、就業規則違反によって漏洩に結びつくような点は認められなかった。
  • 以上から、日本商工会議所内部からの漏洩の疑いは認められなかった。
5.  調査対象(5)の結果については、次のとおりである。
  • 6月15日(金)から18日(月)にかけて、各地商工会議所の試験問題管理体制に関する実態調査を文書により指示した。503施行商工会議所すべてから文書により回答を得た。さらに、18日から20日(水)にかけて電話によって、必要と認める追加ヒアリングを実施した。
  • これらの調査結果から、漏洩の疑いは認められなかった。しかし、若干改善を要すると認められる点があったことから、今後完全を期する意味から各地商工会議所における管理体制を一層強化することとした。
6.  調査対象(6)から(9)までの各調査段階では、6月9日付投書に係る関係者(投書者本人、指摘された講師、受講者、教育機関関係者)から説明を聴取したが、総合すると次のとおりであった。
(1) 当該講師が6月9日(土)午前10時半から昼頃にかけて、自分が教えている団体受講者30名のうち投書者はじめ受験予定者29名(1名は受験せず)に電話をかけたことは事実である。当該講師は激励を兼ねて、各受講者の実力に応じた個人別のアドバイスをしたと話している。
(2) 投書者は当該講師が電話で各問ごとに、第2問帳簿組織(仕訳日計表)、第3問本支店会計、第4問材料副費に関する問題(勘定記入を含む)、第5問標準原価計算(差異分析を含む)と断定的に話したとしているが、当該講師は予想分野を絞り込んで伝えただけで、第4問は余裕があれば材料副費に関する仕訳と勘定記入をやっておいてほしいと伝え、断定的な言い方はしていないと話しており、双方の言い分は異なっている。
(3) 投書者と一緒に研修を受けている受講者のうち、5名の受講者からの協力が得られ説明を聴取できた。それによると、6月9日の電話での当該講師からの説明は断定的というより予想される出題分野の最後の絞り込みという程度であったこと、具体的な問題の内容の話はなかったことなどから漏洩情報の提供という認識はなかったと話している。また、講義中に恒常的に試験情報の概要が入手できるといった投書の指摘については、当該講師からや一緒に教えている他の講師からも、そのような発言は聞かなかったと話している。これらの点について、投書者の指摘と異なった。
(4) 第4問について、投書者は当該講師が6月8日(金)の講義の際は「材料副費」に関する問題は出題されないと断言したと指摘している。ヒアリングを行った受講者によれば、当該講師は「材料副費」に関して自分が準備したプリントを配布し20分説明を行い、出題の可能性は低いけれども余裕のある人は学習するよう指導があったが、出題されないと断言はしていないと話しており、投書者の指摘と異なった。
(5) 当該講師が所属している教育機関関係者によると、同校の簿記講師陣(当該講師は入っていない)が作成した5回分の答案練習(本番形式で5題の問題を解くもの)の中で、第4問を除き結果的に検定試験問題の出題分野が折り込まれていたと話している。また、第4問については、昨年4月に1級から2級におりてきた分野で過去の出題はないものの、予想分野のひとつとみていたと話している。
(6) 当所は6月15日(金)に当該教育機関から、6月13日(水)午後、同教育機関関係者が受講者6名からの要請で話し合いが持たれた際のやり取りにつき、受講者からは、当該講師から電話があったこと、アドバイスは具体的ではなかったこと、苦手分野の指摘であったこと、やま当ての範囲という感触で漏洩という認識はなかったこと等の発言があった旨の報告を受けた。
 以上のような各関係者の説明などを総合的に判断すると、投書者が指摘した漏洩の疑いは認められなかった。
7.  日本商工会議所は東京商工会議所と協力して、最大限の調査を行ったところであるが、各段階における調査のすべてを通じて、投書に指摘されたような当該講師から問題の一部が漏洩したとの疑いに足る事実は認められなかった。
 日本商工会議所としては、以上のとおり、可能な限りの調査を実施したと認識しており、これをもって調査を終了する。
 今後は、こうした指摘を受けることのないよう、より完全な管理体制を構築していく。このため、別紙のとおり、各段階における管理体制調査の過程において若干改善を要すると認められる点の中で、直ちに実行できるものについては必要な措置をとることとし、検討を要する事項については第3者による改善委員会を設置し改善策を検討したうえで、次回11月の簿記検定試験までに可及的速やかに実施に移していくこととする。

以 上


(別 紙)

必要と認める試験実施体制の改善策

1.直ちに実施する改善策
(1) 問題作成者からの守秘義務を遵守する旨の誓約書の提出
(2) ハローダイヤルの日本商工会議所事務局への連絡体制の構築、統一試験施行日前日の出勤体制および校正段階の問題のより厳重な取扱い
(3) 各地商工会議所に対し、試験を厳正公正に実施する旨の通達
(4) 試験問題の配送時における管理体制について、より厳重な取扱いの徹底と日本商工会議所からの指導の強化

2.第3者による改善委員会で検討する改善策
(1) 問題作成者の守秘義務に関する規則の制定
(2) 各地商工会議所における保管場所、試験会場への試験当日の搬入、試験問題の管理責任者の設置など試験問題の管理に関する規則やマニュアルの制定
(3) 校正段階の原稿や配送までの試験問題の保管体制、不要となった関係書類の裁断後の廃棄などに関するマニュアルの制定